債務者区分
「債務者区分」と「分類債権」は、金融機関が債権(債務者への融資)を査定する場合の基本的な考え方です。金融機関に決算書を提出すると、決算書の内容を分析して債務者を区分することが行われます。

financials債務者区分

「債務者区分」と「分類債権」は、金融機関が債権(債務者への融資)を査定する場合の基本的な考え方です。
金融機関に決算書を提出すると、決算書の内容を分析して債務者を区分することが行われます。
理由は、金融機関が「償却・引当」をする金額を算定するためです。

まず最初に、債務者は金融機関の信用格付け(返済能力など信用リスクに応じた格付け)から、「正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先」に区分を判定されます。
次に、判定された「債務者区分」ごとに各債権を保全等から「非分類、Ⅱ分類、Ⅲ分類、Ⅳ分類」に分類します。
そして、金融機関は、この分類された債権を「償却・引当対象債権」として決算処理します。

つまり、金融機関は「償却・引当」する費用が少なければ、それだけ良い決算内容となります。特にⅢ分類額、Ⅳ分類額については、償却か個別貸倒引当金として計上するので、体力のない金融機関は、Ⅲ分類額、Ⅳ分類額が多額にあると決算に悪い影響を与えます。


金融機関から融資を受けるのが簡単ではない要因の一つが、金融機関は融資をする際、この「債務者区分」と「分類債権」に基づき「償却・引当」を計上しなければならないからといえるでしょう。


たとえば、「債務償還年数」が10年ぐらいまでであれば「正常先」に区分されることが多くなります。「債務償還年数」が10年~20年であれば「要注意先」に区分されることが多くなります。「債務償還年数」が20年を超えてくると<返済能力>が乏しいと思われますので、融資を受けるのは難しくなってくるでしょう。(注:他にも債務者区分を判断する要因がありますので絶対ではありません)


「債務者区分」、「分類債権」、「償却・引当」の関係を一表にすると次のとおりとなります。

保全等による分類区分
債務者区分

決済確実な割引手形
・分類対象外債権

優良担保
優良保証

一般担保
一般保証

担保の評価額と処分可能
見込み額との差

信用部分
正常先 非分類 非分類 非分類 非分類 非分類
要注意先 非分類 非分類 Ⅱ分類 Ⅱ分類 Ⅱ分類
破綻懸念先 非分類 非分類 Ⅱ分類 Ⅲ分類 Ⅲ分類
実質破綻先 非分類 非分類 Ⅱ分類 Ⅲ分類 Ⅳ分類
破綻先 非分類 非分類 Ⅱ分類 Ⅲ分類 Ⅳ分類


債務者ごとの債権 分類額 引当の方法
正常先に対する債権 全額が非分類 貸倒予想損失額を算定し、一般貸倒引当金を計上
要注意先に対する債権 優良担保・優良保証は非分類、それ以外はⅡ分類 貸倒予想損失額を算定し、一般貸倒引当金を計上
破綻懸念先に対する債権

優良担保・優良保証は非分類、一般担保・一般保証はⅡ分類、
それ以外はⅢ分類

Ⅲ分類額のうち必要額を個別貸倒引当金を計上
実質破綻先・破綻先に対する債権

優良担保・優良保証は非分類、一般担保・一般保証はⅡ分類、
優良担保及び一般担保の担保評価額と処分可能見込額との差額は
Ⅲ分類、それ以外はⅣ分類

原則、Ⅲ分類額・Ⅳ分類額の全額を償却するか
個別貸倒引当金を計上

※Ⅲ分類が発生するのは「破綻懸念先」、Ⅲ分類・Ⅳ分類が発生するのは「実質破綻先」・「破綻先」です。Ⅲ分類・Ⅳ分類は担保や保証でカバーされない部分で、Ⅲ分類・Ⅳ分類額は必ず「償却・引当」を計上します。
たとえば、担保や保証のない破綻懸念先にプロパー融資をすると、融資額全額をⅢ分類として分類することになります。このⅢ分類額のうち必要額(破綻懸念先の場合金融機関によって差はありますがⅢ分類額の60%くらいから100%)を個別貸倒引当金として計上することとなります。融資をすることで引当金が増えてしまいますので、破綻懸念先にプロパー融資をすることはほぼありません。


金融用語の説明

<債務者区分>
〇正常先・・・・・業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者
〇要注意先・・・・今後の管理に注意を要する債務者(要注意先は、「その他要注意先」と「要管理先」に分かれます)
〇破綻懸念先・・・現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者
〇実質破綻先・・・法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど、実質的に経営破綻に陥っている債務者
〇破綻先・・・・・法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者
※不良先と言われるのは、要管理先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先となります。

<分類債権>
〇非分類・・・・・「Ⅱ分類、Ⅲ分類、およびⅣ分類としない資産」であり、回収の危険性または価値の毀損の危険性について問題のない資産(非分類の優良保証は、信用保証協会付きの融資などが該当します)
〇Ⅱ分類・・・・・債権保全上の諸条件が満足に充たされていないため、あるいは、信用上疑義が存する等の理由により、その回収について通常の度合いを超える危険を含むと認められる債権等の資産(Ⅱ分類の一般担保は、不動産の担保などが該当します)
〇Ⅲ分類・・・・・最終の回収または価値について重大な懸念が存し、従って損失の可能性が高いが、その損失額について合理的な推計が困難な資産
〇Ⅳ分類・・・・・回収不能または無価値と判定される資産