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新規先の実態を把握するのに活用されているのが、信用情報機関の信用調査です。
代表的な調査機関は、帝国データバンク、東京商工リサーチなどがあります。
調査内容には、企業の概要、沿革、株主、従業員数、代表者の経歴、業績の推移、取引金融機関、現況と見通しなどが記載されています。
ただ、この調査は企業側や関係先の協力がないとできません。特に創業したばかりや小規模な企業では開示される情報が少ないため調査データがほぼありません。
そこで、よく活用されるのが「ホームページ」です。
実際、金融機関で新規に口座を開設する時に「ホームページ」の有無を聞かれることが多いです。
ホームページにより、事業内容や業務エリア、企業の理念などがある程度把握できますので、金融機関側かれみれば便利なツールです。また、企業側からみれば、金融機関との融資取引では必須のツールであるともいえます。
CRDは、全国の信用保証協会や政府系・民間金融機関などで構成され、中小企業の金融の円滑化を図るために中小企業の財務データと倒産事例などを集めた公的な金融インフラです。CRDのデータベースは、中小企業庁、日本銀行等の政府機関でも利用さてれています。
信用保証協会付の融資を利用する際には、信用保証協会はCRDのデータベースから統計的に算出された倒産確率を保証の諾否の判断に利用しています。
金融機関は、CRDを利用することで決算書のデータから倒産確率を算出することができますので、融資を判断をする際の分析資料や融資を推進する際の候補先として利用することができます。
金融機関には、こういったデータが莫大にあると覚えておいてください。
創業で一番難しいのは、金融機関での口座開設です。犯罪防止のため入口で厳しく審査されます。また金融機関によって対象としている会社の規模に違いがあったりします。
小規模で創業する場合は、信用金庫または地方銀行が最初の取引銀行となるケースが多いと思います。
信用金庫または地方銀行と取引するメリットですが、融資を受ける場合必ず金融機関の担当者が付きます。ここが大事です。この金融機関の担当者から信頼を得られるよう意識しなければなりません。
会社経営で資金需要はいつ発生するかわかりません。統計データでは、創業から5年で融資残高は増加する傾向にあります。金融機関の担当者と上手に付き合う必要があります。
金融機関の担当者にいつまでも覚えておいてもらえる会社を目指しましょう。
会社を作って登記所の登記が終わると、いろいろなところから郵便物が届きます。電話を公開している場合は営業電話がかかってきます。集客セミナーの案内だったり、ホームページ作成の案内などいっぱいです。
ほとんどがお断りするだろうと思いますが、そんな中で絶対に外してはいけないのが金融機関からの電話や郵便物です。向こうからきたのですからチャンスです。必ず会う機会を設けましょう。金融機関の主な目的は今後融資先になるかです。今借りる予定がなくても金融機関の担当者とお話をしましょう。必ず役に立つことがあります。
金融機関の店頭で用事を対応してもらう際、対応する方はその都度違いませんか。
また、御社を担当する〇〇ですと言われても、その後会ってお話をする機会がほとんどないということはありませんか。金融機関は、全ての取引先に同じ担当者を付けるわけではありません。では、どういう取引先に同じ担当者が付いてくれるのでしょうか。
それは、融資取引がある先です。融資の審査をするには担当者が審査書類を書かなければなりません。当然会社の内容をいろいろと知っておく必要があります。継続的に融資を受けている場合は、担当者と会う機会が自然と多くなります。
金融機関から、担当者が紹介される機会が来たら必ず顔を覚えてください。そしていっぱいお話をすることです(ただし、無制限ではありませんので注意してください)。
私が担当していた社長のほとんどは支店の窓口に来たことがありません。用事があるときはこちらから行きます。それはなぜかというと来るのを待ってられないからです。
金融機関は色々な商品を扱っています。当然ノルマがあります。ノルマを達成できそうな先を訪問します。お願いをする立場からすると逆に融資などお願いされると断りづらいものです(誤解のないように言うと審査はきちんとします)。
行きやすい会社というのがあります。それは金融機関の担当者がいつ訪問しても嫌な顔をせずお話をしてくれる会社です。社長もお願いしたいことがあるんだなと分かっています。
でもお願いは断られることがほとんどです。当然そうですよね。いちいち付き合ってられません。
そうすると、担当者は、会社に有益となる情報を提供してくるようになります。そうギブアンドテイクの精神です。いつ訪問してもお話をしてくれる会社は金融機関の担当者の大事な見込み先になっていきます。
法人の登記をするときは所在地が必要です。金融機関はこの所在地で実態が確認できることを重要視します。
たとえば、シェアオフィスを所在地にした場合、確かにその建物内に人はいますがそこにいる人は全員がその会社の人ではありません。金融機関の担当者が用事があってシェアオフィスを訪問しても代表者がいるのかいないのかわかりません。
こんなことがありました。融資の返済が滞っているので電話連絡をしましたが繋がりません。会社住所に訪問すると、シェアオフィスのビルで、入口で誰に聞いてもその会社のことを知っている人がいません。そのまま行方知れずです。
シェアオフィスを否定するわけではありませんが、融資を受けようとするとハードルが高くなります。ただし、代表者が自宅不動産を所有しているなど居所がはっきりしている場合はハードルが下がると思います。
会社の所在地については、その場所に行けば実態が確認できる場所とすることを意識することが大切です。
ある会社を訪問した時のことです。従業員から元気な挨拶を受けました。社長が言うには挨拶は基本として徹底して教えていますとのこと。たしかに、会社を訪問しても従業員の方から挨拶があるのとないのでは印象が違います。
活気があるとかないとか、整理整頓されているとかいないとか、融資審査をしているとこういったところがしっかりしている会社は金融機関から高評価されます。物事は中身がとても大事ですが、見た目も良いことにこしたことはありません。担当者が訪問した際に、外観から受ける印象で会社の状況を感じ取ることがあります。意外と会社の事務所は観察されていることを覚えておきましょう。
具体的に観察する項目をあげると次のようなものがあります。
・敷地内・事務所内の清掃は行き届いているか
・来訪者に対する従業員の挨拶・態度はしっかりしているか
・従業員の服装に乱れはないか
・トイレは清潔に保たれているか
・重要物の保管はしっかりしているか
これらを一言でいうと、従業員が本業に集中できる環境にあるかです。
私個人の経験ですが、トイレがきれいな会社はしっかりとした経営をされている傾向がありました。
ベトナムの日系企業を訪問した際、トイレに社員であるベトナム人の掃除の当番表が貼ってありました。日本でよくあるトイレ掃除の当番表が海外にもあるんだと関心したことを覚えています。
中小企業の場合、代表者の個人の存在がとても大きいです。
そのため、金融機関の担当者は、代表者個人の人間性や経営者としての資質をよく見ます。
たとえば、代表者が持つ経営理念や経営哲学は経営に大きく影響を与えますので、金融機関の担当者は代表者と面談する際は色々なことを聞いてくるでしょう。その際は、包み隠さず対応しましょう。
知りたいことをあげると
・人脈
・本業以外にしていることはないか
・技術面
・後継者はいるのか
・趣味嗜好
・代表者が乗る車(意外と思うかもしれませんが人間性が形によく出ます)
です。
これらを一言でいうと、本業に集中できる人物かを知りたいのです。
私の経験値ですが、倒産する会社は取引金融機関が多すぎる傾向(10行以上)にあります。
融資取引の金融機関が複数あることは悪いことではありません。でも多すぎるとメインバンクがどこだか分からなくなります。金融機関の担当者の気持ちとしては、メインバンクでないのなら…となってしまいます。
また、なぜ取引する金融機関がいっぱいあるのかを考えたとき、融資を断られて借入できる金融機関を探していると疑うこともできます。
メインバンクを決めることは大事です。
困ったときに頼りとなる金融機関となってもらえるよう、融資取引する金融機関はできるだけコンパクトにしておいた方がいいと思います。
会社の経営は社長一人ではできません。
私が担当していた会社のほとんどは経理は社長以外の方がしていました。そんなの当たり前と思うかもしれませんが、信頼できるとなると意外と難しいことです。小さい会社だと社長の奥様が担当していることが多かったと思います。ある会社では、大きな金庫の前に奥様が机を置いて座っていました(今は防犯上危ないと思いますが)。
信頼とは何?ということですが、きちんと社長と意思疎通ができているかということです。経理に話したことが社長に正確に伝わっていることはとても重要です。社長をしっかりと立て周りに気配りできる方がいる会社は金融機関の担当者としては安心材料です。
社員を新たに募集するとか早期退職者を募っているなどの人の動きの情報は、今後の経営展開を知るきっかけとなります。
例えば、新規事業の進出を計画しているため中途採用があると、それに伴い新たな資金需要が発生する見込みがあるので、金融機関の担当者としては日頃から組織改編の情報を把握することは必要なことです。
特に親族が新たに役員となることは、事業承継の点からとても重要な情報です。金融機関との取引が変わる可能性もあるので、どのような経歴の人物かとても知りたいこととなります。
融資審査の現場では、本当に建築工事をしているか現地調査を行います。
建築工事の融資は工期に合わせて工事代金の回収金で一括返済とすることがセオリーです。時々、工期が延長となり、融資の返済期日を延ばすことがあります。その時は尚更厳格に現地調査を行います。
それはなぜか。本当は工事が完成してお金を受け取っているのに融資の返済をせず他に流用されることを回避するためです。
私も融資審査の現場で資金流用されるのを何度も見てきました。
こういうことがあると、金融機関の担当者との信頼関係が一気に崩れます。二度と融資を受けることが出来なくなります。資金流用は絶対にしないでください。
先に触れた資金流用を回避するため、金融機関は必ず工事代金の入金口座を自分のところにするよう求めます。何も問題がなければその通りにしましょう。
実は融資を出すよりも回収する方が大変だったりします。実際に回収の現場では、約束の期限に返済がないと督促が行われますが、思うように進まないことがあります。その中には普段社長とは疎遠で連絡が取りづらくなっていて、そして社長がことの重要性に乏しいというケースがあります。
金融機関からの連絡にはすぐに対応しましょう。仮に連絡が取りづらくなっていても、工事代金の入金口座が自分のところにあれば、資金の動きを把握することができますので金融機関の担当者としては安心できます。
建設業特有の資料として、金融機関の担当者に会社の決算書を渡すと、工事台帳を基にして、契約金額、工期、出来高、前受金額、未収金額、残金の入金予定を一覧にした「受注工事の明細表一覧」を求められることがあります。
それは、決算書と工事の進捗状況との整合性を確認するためです。当然資料をもとに現場の確認もされます。決算書との不一致が大きくあると粉飾が疑われたりしますので注意が必要です。
この「受注工事の明細表一覧」は、融資審査や、実態財務を把握するうえで大きな役割を担っています。
建設業特有のこととして、「未成工事支出金」や「未成工事受入金」の勘定科目があります。この科目は受注工事の金額が大きく、工事期間が長いと巨額な数字となることがあります。また下請け業者に発注することも多いため「外注費」の割合が高くなる傾向があります。
こういったことから、建設業の融資審査は他の業種と比較してより詳細に財務の実態を見る傾向にあると思います。
「受注工事の明細表一覧」はイメージするとこんな感じです。未収金額と契約残金が今後いつ入金になるかという表です。
| 工事名 |
契約金額 |
工期 |
出来高 |
出来高 |
|---|---|---|---|---|
| 〇〇工事 | 1,000千円 | 〇/〇~〇/〇 | 100 | 1,000千円 |
| 〇〇工事 | 800千円 | 〇/〇~〇/〇 | 80 | 640千円 |
|
受領金額 |
未収金額 |
契約残金 |
入金予定 |
入金予定 |
入金予定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 600千円 | 400千円 | 0 | 200千円 | 200千円 | |
| 200千円 | 440千円 | 160千円 | 600千円 |
(注)決算書との整合性について
〇出来高が100%の場合、この表の「未収金額」は、決算書の「完成工事未収入金」と一致します。
〇出来高が100%未満の場合、この表の「出来高金額」に工事原価率を乗じた金額が、決算書の「未成工事支出金」とほぼ一致します。この表の「受領金額」は、決算書の「未成工事受入金」と一致します。
建設業の許可がいらないケースがあります。
・建築一式工事で1件の請負金額が1500万円未満、延べ面積が150㎡に満たない木造住宅
・建築一式工事以外の工事で1件の請負金額が500万円未満
の軽微な工事であれば建設業の許可は必要がありません。
しかし、「建設業者」が金融機関と融資取引をするには「建設業の許可」の写しを求められます。
これは、信用保証協会を利用する際に必要書類とされているほか、建設業の許可を受けていることが融資審査の判断材料になるからです。
建設業の許可を受けるための要件は、
(1)経営業務の管理責任者がいること
(2)適切な社会保険に加入していること
(3)専任技術者がいること
(4)誠実性があること
(5)財産的基礎又は金銭的信用を有していること
(6)欠格要件がないこと
であり、これら要件を充足して建設業の許可を受けている「建設業者」は一定の評価を受けられます。
この中で新規に建設業の許可を取得するのに厳しい要件と思うのは、(5)の財産的基礎又は金銭的信用を有していることです。
一般建設業の場合、自己資本が500万円以上あること、あるいは500万円以上の資金調達能力があることが必要です。
昨今、建設業の許可が要らない範囲でリフォームなどを行う業者がいます。
この方は「建設業を営む者」に過ぎず、許可を得て建設業を営む「建設業者」ではありませんのではっきりと区別してください。
私の経験上、建設関連で「建設業の許可」がない方に融資をしたことはありません。それは、さきほど触れた財産的基礎を重要視するからです。
金融機関と融資取引をするためには「建設業の許可」は必ず必要と思っておいた方がいいでしょう。
金融機関の担当者がお店に来てくれたからとタダにするのはいけません。
取引先の料理店で数人で食事をした時のことです。お店の若い社長が「食後のコーヒーはサービスします」と私たちに言ったとたん、奥にいた会長(社長の父親です)が「そんな失礼なことを言ってはいけない、お代は頂きなさい」と一蹴されました。商売は商売、きちっと線引きをしました。そうですよね。サービスばかりしていたら利益が出ません。
金融機関の担当者としては、赤字となっては困ります。会長の言うことは最もです。企業の考え方がよく分かる経験でした。
ミシュランガイドは覆面でレストランを評価するので有名ですが、金融機関もいろいろな目的で飲食店を調査をすることがあります。
あるお店の繁盛状況など実態を確認して格付けの見直しをするため、覆面で予約をして訪問したことがあります。しかし、30分位で素性がばれてしまいました。カウンター越しに社長と思われる方と話をしていたのですが、どうも雰囲気が金融機関の人間と察したらしく直球で〇〇の方ですかと確認されました。向こうも接客のプロです。脱帽しました。
その後は、あくまでもお店に来た普通のお客として接していただき食事は終了しました。
お店はフロアーを担当するおかみさんを中心として繁盛しており、格付けの見直しをしても大丈夫と判断しました。
駅から離れていて交通の便も悪いのに予約しておかないと入れないお店があります。
あくまでも私の経験ですが、こういったお店は、〇〇を専門とすることを前面に出しています。そしてお店の中はそんなに広くない。また回転率も低かったです。
しかし、回転率が低くても客単価は高い傾向にあります。メニューも多くありません。
融資の審査にあたっては、客単価×回転率から薄利多売なのかそうでないのかをよく見ます。どちらがよいのかは経営方針でもあるので正解はありません。私の経験では、長くその場所で営業をしているお店は、回転率が低くても客単価が高いお店でした。
融資審査の書類作成では、何がメイン料理なのか記載します。これは審査のアピールポイントとなります。
「駅前」と書くのは絶対的なアピールポイントではありません。「駅前」ということは競争も激しく賃料も高くなるからです。客単価が高くてもお客様が来るというのは、メイン料理という付加価値があることが大きな要因だと思います。
新商品が売れれば融資金の回収が確実であると思ってもらえます。
食品を製造する会社に訪問した際に、普段工場にいることが多い社長が試食品を持って現れました。絶対に売れると言うんです。その時は好みの味ではなかったのでその旨を伝えました。
それからというもの訪問するたびに試食させられて、最終的にその新商品を開発する資金を融資することになりました。
その後のことですが、その商品は他の会社が真似をするほど売れました。このように金融機関の担当者に会社が作っているものを理解してもらえるよう取り組む姿勢はとても大事です。
百聞は一見に如かずです。
ある製品のパーツを製造している工場を見学した時のことです。普段目にすることのできない製品の内部にある小さなパーツでした。社長から熱心に説明を受けそのパーツを頂いて帰ることにしました。
その後、金融庁の検査(今では金融庁の検査マニュアルは廃止となりました)で、会社の内容を説明する際、工場見学でもらったパーツを検査官に見せたところ、手に取ってジロジロと見て話がスムーズに進み無事検査は終了しました。説明するには、資料を見せるより作っている物を見せた方がいいと本当に感じた瞬間です。それからは、工場見学では、力を入れている製品をできれば頂くことにしました。その後の融資審査の会議では大いに役に立ったことは言うまでもありません。
そしてひとつ言っておきたいことがあります。融資取引がある場合は、工場は金融機関の担当者から見たいと言われる前に、先に見てくださいと言いましょう。
なぜなら、金融機関の担当者が見たいというタイミングは、融資審査をこれからする時です。そんなタイミングで日程調整などしていたら資金需要に間に合いません。資金需要が発生する前に先に見ておいてもらえれば慌てなくて済みます。