金融機関の担当者との付き合い方を教えて‼創業スタート編

金融機関の担当者との付き合い方を教えて‼創業スタート編

口座開設が金融機関の担当者との付き合いのスタートです

創業で一番難しいのは、金融機関での口座開設です。犯罪防止のため入口で厳しく審査されます。また金融機関によって対象としている会社の規模に違いがあったりします。
小規模で創業する場合は、信用金庫または地方銀行が最初の取引銀行となるケースが多いと思います。
信用金庫または地方銀行と取引するメリットですが、融資を受ける場合必ず金融機関の担当者が付きます。ここが大事です。この金融機関の担当者から信頼を得られるよう意識しなければなりません。
会社経営で資金需要はいつ発生するかわかりません。統計データでは、創業から5年で融資残高は増加する傾向にあります。金融機関の担当者と上手に付き合う必要があります。
金融機関の担当者にいつまでも覚えておいてもらえる会社を目指しましょう。それはほんのちょっとの「きっかけ」から始まります。

 

電話がかかってきたら

会社を作って登記所の登記が終わると、いろいろなところから郵便物が届きます。電話を公開している場合は営業電話がかかってきます。集客セミナーの案内だったり、ホームページ作成の案内などいっぱいです。
ほとんどがお断りするだろうと思いますが、そんな中で絶対に外してはいけないのが金融機関からの電話や郵便物です。向こうからきたのですからチャンスです。必ず会う機会を設けましょう。金融機関の主な目的は今後融資先になるかです。今借りる予定がなくても金融機関の担当者とお話をしましょう。必ず役に立つことがあります。

 

金融機関の担当者の顔がわかりますか

金融機関の店頭で用事を対応してもらう際、対応する方はその都度違いませんか。
また、自分の会社を担当する〇〇ですと言われても、その後会ってお話をする機会がほとんどないということはありませんか。金融機関は、全ての取引先に同じ担当者を付けるわけではありません。では、どういう取引先に同じ担当者が付いてくれるのでしょうか。
それは、融資取引がある先です。融資の審査をするには担当者が審査書類を書かなければなりません。当然会社の内容をいろいろと知っておく必要があります。継続的に融資を受けている場合は、担当者と会う機会が自然と多くなります。
金融機関から、担当者が紹介される機会が来たら必ず顔を覚えてください。そしていっぱいお話をすることです(ただし、無制限ではありませんので注意してください)。そうすれば絆も深くなっていきます。

 

会社に来てもらえるようにしよう

私が担当していた社長のほとんどは支店の窓口に来たことがありません。用事があるときはこちらから行きます。それはなぜかというと来るのを待ってられないからです。
金融機関は色々な商品を扱っています。当然ノルマがあります。ノルマを達成できそうな先を訪問します。お願いをする立場からすると逆に融資などお願いされると断りづらいものです(誤解のないように言うと審査はきちんとします)。
行きやすい会社というのがあります。それは金融機関の担当者がいつ訪問しても嫌な顔をせずお話をしてくれる会社です。社長もお願いしたいことがあるんだなと分かっています。
でもお願いは断られることがほとんどです。当然そうですよね。いちいち付き合ってられません。
そうすると、担当者は、会社に有益となる情報を提供してくるようになります。そうギブアンドテイクの精神です。いつ訪問してもお話をしてくれる会社は金融機関の担当者の大事な見込み先になっていきます。

 

事務所は観察されています

ある訓練所を訪問した時のことです。訓練生から元気な挨拶を受けました。先生が言うには挨拶は基本として徹底して教えていますとのこと。たしかに、会社を訪問しても従業員の方から挨拶があるのとないのでは印象が違います。
活気があるとかないとか、整理整頓されているとかいないとか、融資審査をしているとこういったところがしっかりしている会社は金融機関から高評価されます。意外と会社の事務所は観察されていることを覚えておきましょう。

 

取引する金融機関はできるだけコンパクトにしよう

私の経験値ですが、倒産する会社は取引金融機関が多すぎる傾向(10行以上)にあると思っています。
融資取引の金融機関が複数あることは悪いことではありません。でも多すぎるとメインバンクがどこだか分からなくなります。金融機関の担当者の気持ちとしては、メインバンクでないのなら…となってしまいます。
相思相愛です。メインバンクを決めることは大事です。
困ったときに頼りとなる金融機関となってもらえるよう、融資取引する金融機関はできるだけコンパクトにしておいた方がいいと思います。

 

経理など金融機関との窓口になる人は信頼できる人にしよう

会社の経営は社長一人ではできません。
私が担当していた会社のほとんどは経理は社長以外の方がしていました。そんなの当たり前と思うかもしれませんが、信頼できるとなると意外と難しいことです。小さい会社だと社長の奥様が担当していることが多かったと思います。ある会社では、大きな金庫の前に奥様が机を置いて座っていました(今は防犯上危ないと思いますが)。
信頼とは何?ということですが、きちんと社長と意思疎通ができているかということです。経理に話したことが社長に正確に伝わっていることはとても重要です。社長をしっかりと立て周りに気配りできる方がいる会社は金融機関の担当者としては安心材料です。

 

馬が合わないとき

金融機関の担当者とどうしても馬が合わないということがあると思います。逆に金融機関の担当者から見て馬が合わないお客様もいます。お互いの生い立ちや環境が違うことで、性格の違いが表にでることはよくあることです。
ひとつ覚えておいて欲しいのは、馬が合う合わないは感情の問題です。金融機関は組織で動いているので感情で取引が左右されることはありません。大切なのは感情ではなく、金融機関という組織の窓口である担当者と良好な関係を築くことです。
では良好な関係を築くとはどういうことでしょうか。お世辞を言ったり、接待をすることではありません。お互いに常に誠実であるということです。
私の経験ですが、とてもわがままなワンマンの社長がいて私は苦手としていました。この社長は思ったことをそのまま言う方で(でも、うそはつかない正直な方)で、私からみたら無理難題、社長からみたらなんでできないんだという関係です。お互いに微妙な距離感があります。
ここがとても大事だと思っていますが、ではこの社長は要求が通らないからと言って合わない担当者を代えてくれと言うかというと、そういうことは決して言いません。それは私個人としてではなく金融機関の組織として対応するからです。社長の考えていることを組織として検討してきちんと回答することで、社長もその回答を受け入れてくれます。
こんなことがあったからといって取引がなくなるということはありませんでした。逆に有力な取引先となりました。お互いに誠実であるから理解しあえるところです。

 

融資申込に必要な創業計画書の作成は金融機関の担当者が手伝ってくれるの?

よく質問されます。金融機関と融資申込者の立場は債権者と債務者になりますので、金融機関の担当者は計画書などの作成過程についてはノータッチです。つまり金融機関の担当者は申込者から提出された書類を審査する立場ですので事前に関与することは絶対にありません。そして提出された書類の内容について質問します。整合性がなかったり、不実の記載などがあると謝絶となります。意外とシビアです。
初めて創業計画書を作る場合で一人で作成するのが難しい場合は、例えば商工会議所などで無料相談を実施していますので相談してみるのもいいでしょう。ただしあくまでも無料相談ですので、計画書の作成を一緒に完成まで作ってくれるわけではありません。
有料となりますが、公的融資を扱う国家資格の士業(税理士や行政書士など)にサポートを依頼することも検討の一つです。私も実際に士業が関与する案件をいくつも見てきました。ただ特に気を付けてほしいのは、士業が書類作成に関与したからといって100%審査が通るわけではありません。金融機関の担当者は人を見ています。あくまでも本人が信用できる人物であることが大切ですので忘れないでください。

 

融資を受けるときに結ぶ「金銭消費貸借契約証書」はどこが重要なの?

お金を借りるときに結ぶ「金銭消費貸借契約証書」には難しい言葉でいっぱい条項が記載されています。初めて見る方は理解するのは大変だと思いますが内容はとても重要なことが書かれています。大半は返済が滞った時など問題が発生したときどうするかが書かれています。
その中で特に覚えて欲しいのが「期限の利益の喪失」条項です。例をあげると、毎月の約定返済をしなかったり、税金滞納で預金に差押えがあったなど、条項に書かれている事象が発生すると、返済の期日が来ていなくても直ちに全額返済してくださいというものです(ここでは詳細は割愛しますが、当然に期限の利益を失う場合と請求により期限の利益を失う場合があります)。
「期限の利益を喪失」すると、金融機関から内容証明郵便でその旨の通知と元金・遅延損害金の返済請求が来ます。その瞬間から金融機関から督促が始まります。それでも返済がされないと金融機関は強制回収を裁判所に申立することになります。こうなると事業が出来なくなってしまいますので、絶対に避けなければばらないことです。
「期限の利益」を一度喪失してしまうと絶対に元には戻りません。いろいろな事情で返済が厳しくなることがあります。こういうときは「期限の利益を喪失」する前に、金融機関の担当者に必ず相談をしてください。

 

決算書はどこを見てるの? ①「インタレスト・カバレッジ・レシオ」

金融機関の担当者が重視するのは、融資先に<返済能力>があるかということです。利益が黒字であるか赤字であるかは当然見ています。でもそれだけでは<返済能力>はわかりません。
日本銀行の考査があったときに(金融機関は定期的に日本銀行の考査があります)、考査管と話をした際にしつこく確認されたことが、債務者の「インタレスト・カバレッジ・レシオ」でした。
これは、(営業利益+受取利息・配当金)を(支払利息)で割った数字で、金融費用である「借入利息の支払い能力」を見る比率です。1倍以上が必要とされます。1倍未満だと(営業利益+受取利息・配当金)で(支払利息)を払うことができないということを表しています。
つまり、1倍未満は、「借りた利息」ですら「営業で稼ぐ利益」で返すことができていないということですので、<返済能力>に疑問が持たれます。
実際に融資の現場では、「営業利益」が出ているのに「支払利息」の方が多いため、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」の数字は1倍未満となるケースが結構あります。こういうときは借入金が過大ではないか、簿外債務がないかなどチェックをします。借りたお金の利息をきちんと返せる能力があるか「インタレスト・カバレッジ・レシオ」は意識しておくといいと思います。

 

決算書はどこを見てるの? ②「債務償還年数」

それともう一つ<返済能力>で見ていることがあります。それは返済しなければならない債務を何年で返済できるかということです。
返済しなければならない債務を「要償還債務」といい、これは「借入金・社債等の債務」から「正常運転資金(売掛金+受取手形+棚卸資産ー買掛金ー支払手形)」「現預金(余剰資金)」を引いたものです。
(※債務の範囲は借入金や社債だけではなく、収益によって返済すべき負債も含めます)
この「要償還債務」を「営業キャッシュフロー(当期損益+減価償却費などの非資金項目)」で割ったものが「債務償還年数」となります。
この「債務償還年数」が10年ぐらいまでであれば<返済能力>があると言えます。20年を超えてくると<返済能力>が乏しいと思われますので、融資を受けるのは難しくなってくるでしょう。

 

決算書はどこを見てるの? ③「損益と資金繰り」

中小企業の決算書についてですが、必ず勘定科目を一つ一つチェックします。特にチェックするのは、売掛金や棚卸資産です。なぜチェックをするかというと、不良資産や粉飾があれば補正したものに直して審査に使用するためです。表面上の数字でそのまま審査に使用することはありません。決算書上の「損益」が黒字でも金融機関が補正したものは赤字となることがあります(これは金融機関の内部で行っていますので表に出ることはありません)。
このように決算書上の「損益」は、金融機関の内部で補正されることがありますが、それは<返済能力>を正しく見るためです。
ただ、この決算書上の「損益」は、実際に「お金」が出入りしなくても計上されます(例えば売上の全てを現金でもらうことはないと思います。売掛金となることもあります)ので、別に「お金」の動きを端的に見る必要があります。
そのために、「資金繰り」(お金の出入り)の確認が重要になります。「お金」の動きはうそがつけないからです。
金融機関の担当者から、「資金繰り」(お金の出入り)を確認するため、「資金繰り表」の提出を依頼されることがあります。その場合は嫌がらず必ず提出しましょう。(「資金繰り表」とは、お金の動きを月単位で記入したものです。実績と今後の予想を記入します。)
仮に「資金繰り表」を作っていなかったとしても、今後入金がいつとか、給料の支払いはいつとか、頭では分かっているはずです。出来るだけ早く「資金繰り表」を作成して管理してください。
決算書上利益が出ていてもお金が足りなくなることがあります。こういうことを把握するために「資金繰り表」でお金の動きを管理することはとても大事です。