知っておきたい不動産に関すること編

金融機関と融資取引をする際、不動産を担保提供することがあります。不動産や担保に関することについて知っておきたいことをお伝えします。

不動産担保など知っておきたい不動産に関すること

不動産の登記記録と担保物権

不動産の登記記録は次のように構成されています。
<土地・非区分建物>
〇表題部・・・表示に関する登記
〇権利部・・・権利に関する登記 
  甲区は所有権に関する登記の登記事項
  乙区は所有権以外の権利に関する登記事項
<区分建物>
〇表題部・・・一棟の建物の表示に関する登記と区分建物の表示に関する登記
〇権利部・・・権利に関する登記 
  甲区は所有権に関する登記の登記事項
  乙区は所有権以外の権利に関する登記事項


「表題部」は、不動産を特定するために、土地や建物の物理的現況を公示する登記で必ず作成されます。表題登記の申請は所有者に申請義務が課されています。また登記官が職権ですることができます。


「権利部」の権利に関する登記については、登記するかしないかは権利者の自由となっていますので、登記をされていないこともあります。ただし、権利を有する者は登記をしておかなければ、権利の存在を第三者に対抗(主張)することはできませんので、ほぼ登記されています。例をあげれば、甲区に登記される「所有権」や乙区に登記される「抵当権」です。

金融機関と融資取引をする際に関係してくることが、「権利に関する登記」です。
登記できる権利(物権、債権)は10個(所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権、買戻権、採石権)ありますが、このうち「担保物権」は、「先取特権、質権、抵当権」です。一般的に金融機関は債権の担保として権利部の乙区に「抵当権」の登記を設定します。


担保物権「抵当権」とは

「抵当権」は、債権者=金融機関が特定の債権を担保するために設定します。
「抵当権」は、債務者が自己の住んでいる家について居住しながら担保の目的物とすることができるため、留置的効力のある質権と違って金融機関にとっては設定がしやすい担保物権です。
金融機関が担保を提供してくださいという場合は、不動産に「抵当権」を設定することを指すことが一般的です。


「抵当権」は「約定担保物権」ですので、設定契約を結ぶことで生じます。金融機関から融資を受ける際に「金銭消費貸借契約書」を作成しますが、不動産を担保提供する場合は「抵当権設定契約書」を別途作成します。


なお、抵当権者である金融機関が権利の存在を第三者に対抗(主張)するためには登記が必要ですので、必ず権利部の乙区に「抵当権」の登記が設定されます。
「抵当権」の担保の範囲は、債権元金プラス2年分の利息・損害金となります。


「抵当権」についてもう少し詳しく説明すると、

「抵当権」とは、債権者が、債権を担保するために、債務者または第三者から占有を移さないで提供された不動産、地上権、又は永小作権について、他の債権者に優先して自己の債権の弁済を受けることができる担保物件です。簡単にいうと、「不動産の所有権、地上権、永小作権」が「抵当権の目的物」となります。


「抵当権」で担保される債権を「被担保債権」といいます。「被担保債権」は通常は「金銭債権」ですが特に金銭債権に限っているわけではありません。物の引渡請求権等の金銭債権以外の債権であっても、「抵当権」の「被担保債権」となります。「金銭債権」の具体例としては金融機関からの借入金が該当します。


「抵当権」の効力の及ぶ範囲の例についてですが、
建物を目的とする「抵当権」が設定された後、建物に接続して部屋を増築した場合、「抵当権」の効力は増築した部屋にも及びます。
また、建物を目的とする「抵当権」が設定された後、附属建物の新築の登記がされれた場合、「抵当権」の効力は附属建物にも及びます。


「被担保債権」が債務不履行になった場合は、「抵当権」が実行されます。
抵当権者は、担保不動産の競売の方法または担保不動産の収益執行の方法によって優先弁済を受けることができます。

このように、金融機関(抵当権者)は、融資したお金(被担保債権)が返済されない場合の回収手段として不動産に「抵当権」を設定します。
融資したお金(被担保債権)が完済となれば、「抵当権」は消滅します。ただ、法律上「抵当権」は消滅しても、不動産に設定された「抵当権」の登記は自動で抹消されることはありませんので、別途「抵当権」の抹消登記が必要となります。


稀に被担保債権は完済しているのに「抵当権」の抹消登記をしていないことがあります。完済となると金融機関から、抵当権抹消の登記原因として「抵当権消滅証書(または解除証書)」、「登記識別情報(または登記済証)」、「金融機関の委任状」が渡されます。
この書類を不動産の管轄法務局に提出して抵当権の抹消登記手続きをするのですが、放置している場合があります。自身での対応が難しい場合は、司法書士に依頼して手続きをすることが必要です。



担保物兼「抵当権」の目的物:土地の地目

土地の地目はいくつあるかわかりますか。地目は、土地の用途を表す表示に関する登記事項です。


地目は、土地の主たる用途によって23に限定されていて、「適当に地目を定めることはできません」。不動産登記事務取扱手続準則第68条により、地目を認定するためには、「土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定める」ものとされています。


定められている地目を列挙すると次のとおりとなります。

田・畑・宅地・学校用地・鉄道用地・塩田・鉱泉地・池沼・山林・牧場・原野・墓地・境内地・運河用地・水道用地・用悪水路・ため池・堤・井溝・保安林・公衆用道路・公園・雑種地

金融機関が担保として主に抵当権を設定する土地の地目は「宅地」です。「宅地」とはその名のとおり、「建物の敷地およびその維持もしくは効用を果たすために必要な土地」の地目です。


「宅地」は市街化区域にあることがほとんで流通性が高いため、担保とする価値があります。また「宅地」と接する「公衆用道路」は担保価値はありませんが、「宅地」と一体となっていれば一緒に抵当権を設定されます。


稀に土地の現況や利用状況が建物の敷地であるのに、土地の地目が「畑」や「山林」となっていることがあります。この場合は、担保として抵当権を設定するためには、「宅地」への地目変更が必要となります(市街化区域の農地については農業委員会へ農地転用届出をすることで地目の変更ができます)。


「宅地」として認定する意外な事例は、テニスコートとプールです。「宅地」に接続するテニスコート・プールは「宅地」とし、その他は「雑種地」となります。


金融機関が担保として徴求する土地は、市街化区域にあって流通性があり換価性の高い「宅地」が中心となることを知っておきましょう。


担保物件「抵当権」の目的物:建物の種類

建物の種類は、建物の利用状況を示す表示に関する登記の登記事項です。
建物の種類は、土地の地目と違って、「建物の用途により適当に定める」ことができます。
主な種類を列挙すると次のとおりとなります。

居宅・店舗・共同住宅・寄宿舎・事務所・料理店・工場・倉庫・車庫・物置・病院・診療所・駐車場、集会所、野球場、競馬場、競技場、練習場、遊技場、教習所などです。


ただし、建物の認定要件は不動産登記規則第111条では次のように定められています。
「建物は、屋根及び周壁またはこれらに類するものを有し、土地に定着した構造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。」


また、不動産登記事務取扱手続準則第77条で建物の例示がされています。

第77条 建物の認定に当たっては、次の例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定するものとする。
(1)建物として取り扱うもの
ア 停車場の乗降場又は荷物積卸場。ただし、上屋を有する部分に限る。
イ 野球場又は競馬場の観覧席。ただし、屋根を有する部分に限る。
ウ ガード下を利用して築造した店舗、倉庫等の建造物
エ 地下停車場、地下駐車場又は地下街の建造物
オ 園芸又は農耕用の温床施設。ただし、半永久的な建造物と認められるものに限る。
(2)建物として取り扱わないもの
ア ガスタンク、石油タンク又は給水タンク
イ 機械上に建設した建造物。ただし、地上に基脚を有し、又は支柱を施したものを除く。
ウ 浮船を利用したもの。ただし、固定しているものを除く。
エ アーケード付街路(公衆用道路上に屋根覆いを施した部分)
オ 容易に運搬することができる切符売場又は入場券売場等


登記先例から、一般に私たちが住居としている戸建てやマンションの建物以外に、建物として登記できる具体的な例としては次のとおりです。

周壁が鉄筋コンクリートで空気圧で膨らませてドーム上の屋根とした建造物(東京ドームなど)、
寺院の山門で上部が宝物庫として利用されているもの、
主な用途が電波塔の鉄塔であっても鉄塔の下部に建物がありその建物に設けられたエレベーターと階段によって当該建物と鉄塔上部の展望台とが連絡しており当該建物と当該展望台が一体として利用されているもの(東京タワー)、
回転式パーキング機械が設置されているタワー状の立体式駐車場、
基礎工事を施した廃車となった電車の車両(居室、店舗等として利用している場合)など

登記先例から、建物として登記できない具体的な例としては次のとおりです。

駅のホームの売店、ビニールハウス、工事現場に設置された作業員宿泊所、住宅展示場のモデルハウスなど


稀に未登記の建造物があります。この構造物は登記(表題部の表示に関する登記)をしなければならない建物なのかそうではないのか、登記(表題部の表示に関する登記)をしなければならない建物の要件を知っておくことは大切なことです。(表題部は、不動産を特定するために、土地や建物の物理的現況を公示する登記で必ず作成されます。表題登記の申請は所有者に申請義務が課されています。また登記官が職権ですることができます。)


ところで、なぜ登記(表題部の表示に関する登記)をしなければならない建物の要件を知っておく必要があるのかというと、少し難しい話となりますが、「法定地上権」というものがあるからです。

「法定地上権」とは、
「土地」及びその上に存する「建物」が同一の所有者に属する場合において、その「土地」又は「建物」につき抵当権が設定され、その実行により所有権を異にするにいたったときは、その「建物」について「地上権」が設定されたとみなされます。


※「地上権」とは、
他人の土地を直接かつ排他的に支配する用益物権です。
地上権者は、地上権の目的の範囲内で目的物である土地を使用収益し利益を得ることができます。

「法定地上権」が成立するには、「建物」は抵当権設定当時実際に存在していればよく、登記された建物である必要はありません。
つまり、「更地」と思って抵当権を設定した「土地」に、当時既に構造物があった場合、それが建物の要件を満たしていたときは、抵当権が実行されると「法定地上権」が成立する可能性があります。
担保の評価を考えた場合、「更地の土地の評価」と「地上権がついた土地の評価」では大きく評価に差が出ます。「地上権がついた土地」では、底地として借地権割合分評価が減額されます。


私が金融機関の本部で融資回収を担当していたとき、「更地の土地」の競売の申立を行ったことがあります。
ところが、裁判所の現況調査(不動産鑑定士が調査します)で、土地に抵当権を設定した当時、既に「未登記の建物がある」ことが判明しました。土地の評価額は底地として相当額減額され、満足のいく回収とはなりませんでした。後に担当者に建物の存在のことを聞いたところ、建物であるとは思っていなかったとのことでした。


このように、「抵当権」を実行しても「被担保債権」の金額を充足できなければ、ロスを出すこととなります。
登記(表題部の表示に関する登記)をしなければならない建物の要件を知っておく必要があるのは、このような事例を未然に防ぐためです。